日本でのポール・デルヴォー個展は6回開催!
■ポール・デルヴォー(1897-1994)と言えば、マグリットと双璧をなすベルギーのシュールレアリストです。デルヴォーの魅力は大きな油彩画ですが、そこにいたる習作の数々においても、例えばデッサン等の下絵と最終的な油彩との構成の違い等、見れば見るほど大変興味深いものがあります。
■また繰り返し現れるモチーフ(機関車、鉄道、学者、骸骨、遺跡など)も、何を意味しているのか、見る人により自由な解釈を聞く事ができ、デルヴォーの描く世界観は鑑賞者を常に刺激します。
■その存命中に、日本では4回も展覧会が開催されており、図録の巻頭には彼自身のメッセージも寄せられています。その画業は長期にわたったため、油彩カタログレゾネが刊行された1975年以降も旺盛に作品は製作され続けました。
■日本語に訳された画集も以外と少なく、その全貌を知るには、この6冊の展覧会図録はかかせません。6冊中4冊までが黒もしくは黒に近い色の背表紙であり「デルヴォー=夜」のイメージが高められいるような気がします。名前の表記も「デルボー」から「デルヴォー」へと変遷。
■図録はオークションによく出品されていますし、「日本の古本屋」では常時掲載されていますので比較的楽に入手できるかと思います。 ■ベルギー絵画のコレクションで知られている姫路市立美術館は、デルヴォーの作品を多数所蔵しています。これを借用した個展も開催されています。
2004-05年版図録 その生涯と人物像 ■肖像画を中心に
新潟展:6月19日〜7月25日 新潟市美術館
宮崎展:7月31日〜9月5日 宮崎県立美術館 福岡展:9月10日〜10月17日 福岡県立美術館 名古屋展:10月23日〜11月7日 松坂屋美術館 福島展:2月5日〜3月13日 福島県立美術館 主催:日本経済新聞社など 表紙:「噂」Rumeurs 1980年 サイズ:28×22.5センチ 113ページ 装丁:ソフトカバー 新潟展のチラシ「テラス」Terrasse 1979年 |
■内容は「注文による肖像画」「自画像」「家族の肖像」「愛の肖像」「追悼の肖像」「学者の肖像」「ジュール・ボルデの肖像」「モデルの肖像」、最後に「晩年の女性像」と分かれて紹介されており、美女等の人物像変遷にもスポットをあてた、かなり意義のある展覧会と言えます。
□寄稿:
■「肖像画」J.ヴァン・ドゥーン/ミシェル・フランソワーズ
■「ポール・デルヴォーによるジュール・ボルデの肖像、 あるいはジュール・ボルデによるポール・デルヴォーの肖像」イニャス・ヴァンドヴィヴァレー(ルーヴァン=ラ=ヌーヴ美術館長)
■「ポール・デルヴォーの生涯」Guy Carels:写真を交えた文章形式の生涯略歴。途中で「ジュール・ボルデの肖像」「デルヴォー美術館」の項目あり。
1996-97年版図録
大阪展:10月9日〜10月27日 大丸ミュージアム・梅田
山口展:11月7日〜11月19日 下関大丸・7階文化ホール 千葉展:11月23日〜1月12日 佐倉市立美術館 京都展:1月23日〜2月3日 大丸ミュージアムKYOTO 東京展:2月6日〜3月10日 新宿・伊勢丹美術館 主催:朝日新聞社ほか 表紙:「見捨てられて」Abandon 1964年 サイズ:28×22.5センチ 149ページ 装丁:ソフトカバー |
■開館したばかりの佐倉市立美術館に足を運び、私にとっては2回目のデルヴォー展でした。千葉県佐倉市とオランダは医学を通じて江戸時代から歴史的交流があり、印旛沼湖畔には本格的なオランダ風車まであります。そのため、なにかとオランダ・ベルギーの展覧会が催されることが多い美術館です。入館者が少なくゆっくり落ち着いて堪能でき、ここでは緻密な画面構成や人物やモチーフ一つ一つの表現の違い等、新たな視点で眺めることができました。
□寄稿:
●「ポール・デルボー不滅の…」シャルル・ヴァン・ドゥーン(ポール・デルボー財団理事長)p.12 原文:p.13
●「ポール・デルボー」ナターシャ・ヴァン・ドゥーン pp.14-15 原文:pp.16-17
●「孤独の奥に浮かぶ不条理感」吉村良夫(美術評論家)pp.18-21
●「デルボー絵画の変遷」高瀬晴之(姫路市立美術館学芸員)pp.22-27
◎年譜 高橋弘樹(佐倉市立美術館学芸員)/編集:pp.137-148 ◎ポール・デルボー美術館紹介:p.149
1989-90年版図録
大阪展:11月1日〜11月13日 大丸ミュージアム・梅田
京都展:1月18日〜1月23日 大丸ミュージアムKYOTO 東京展:2月1日〜2月26日 新宿・伊勢丹美術館 姫路展:3月3〜4月5日 姫路市立美術館 横浜展:4月10日〜5月13日 横浜美術館 主催:東京新聞、日本航空ほか 表紙:「クリジス」Chrysis 1967年 裏表紙:「隠棲の館」L'ermitage 1973年 サイズ:28×22.5センチ ページ付けなし 装丁:ソフトカバー |
■私が最初に見たポール・デルヴォー展は、就職して間もない頃、新宿・伊勢丹において日本で4回目の展覧会でした。その一年前、東京国立近代美術館でマグリット展やルドン展を見ていて幻想絵画の延長として、楽しみにしていました。大作ぞろいの油彩画が並ぶ展示は壮観な眺めでしたが、最初のデルヴォー作品との出会いとしては、この世のものとは思えない、あどけない美女の裸体ばかり見せられて、なんとも退廃的な「夜」のイメージにどっぷりつかったような思い出となっています。
□寄稿:
●「ポール・デルボーとその時代像」フィリップ・ロベール・ジョン(ベルギー王立美術館主任学芸員) 10-15ページ
●「デルボー=夢の魔法」 シャルル・ヴァン・ドゥーン(ポール・デルボー財団理事長)
●「ポール・デルボーの夢と芸術」マルセル・ヴァン・ヨール(アントワープ現代美術館館長)
●「デルボーの自由な演出−あてのない無言劇−」武田厚(横浜美術館学芸部長)
●「デルボーの旧ペリエ邸壁画」伊藤誠(姫路市立美術館副館長)
◎年譜 速水豊(姫路市立美術館学芸員)/編集 ◎アルバム ◎参考文献 ◎ポール・デルボー美術館紹介
1987-88年版図録
熊本展:熊本県立近代美術館
福岡展:1988年1月5日〜1月31日 福岡市美術館 岡山展、仙台展 主催:読売新聞社ほか 表紙:「謎」L'enigma 1940年 サイズ:27×22.5センチ ページ付けなし 装丁:ソフトカバー |
■図録でみると「横たわるヴィーナス」「骸骨」「遭遇」「女友達」「汽車」「視線」「ポンペイ、古代の遺産」「風景」と大まかな題材、あるいはモチーフごとに作品解説されています。
■古本屋で入手した福岡展の図録を所有していますが、全国6会場で巡回されていたはずなのに、何故か他の会場情報は明記されていません。なお福岡展のみ姫路市立美術館の所蔵作品5点が特別出品されているようです。
□寄稿:
●「ポール・デルボー」 F.サファン=クレェイ(リエージェ近代美術館長)
◎年表 渡部真吾樹/編集
1983-84版図録
大阪展:83年10月19日〜11月7日 大丸ミュージアム(大丸梅田店)
姫路展:84年1月6日〜1月29日 姫路市立美術館 東京展:84年2月3日〜2月25日 新宿・伊勢丹美術館 富山展:84年3月3日〜4月1日 富山県立近代美術館 主催:朝日新聞社ほか 表紙:「砂の町」La ville des sables 1977年 サイズ:24×25センチ ページ付けなし 装丁:ソフトカバー |
■図録巻頭にデルボー自らのメッセージあり。
□寄稿:
●「日本におけるポール・デルボー」マルセル・パケ(美術評論家)
●「ポール・デルボーは現代の神話を創造する」小川正隆(富山県立近代美術館長)
◎年譜(写真掲載付) 田中玲子/編 ◎ポール・デルボー美術館の紹介
1975版図録
東京展:3月29日〜5月5日 東京国立近代美術館
京都展:6月7日〜7月13日 京都国立近代美術館 主催:ベルギー文化省、毎日新聞社 表紙:「日暮れ」Le soir tombe 1970年 サイズ:24×25センチ ページ付けなし 装丁:ソフトカバー |
■巻頭の主催者メッセージには、1971年のマグリット展開催以来、日本の美術愛好家は、ベルギーのシュールレアリスムの双璧であるデルボー展を強く待ち望んでいた云々とあります。
■図録巻頭にデルボー自らのメッセージあり。
□寄稿:
●「ポール・デルボー」ジャック・ムーリス
◎年譜 ◎主な展覧会