マグリットの作品が登場する小説!
■有名な絵画作品が出てきたり、引用されたりする小説ってありませんか。
■たまたま私が読んだ文学作品でマグリットの作品が登場した本をご紹介します。
『光の帝国−常野物語』
恩田陸/著
集英社 1997年12月刊行 集英社文庫 2000年9月刊行 |
■題名がまさにマグリットの作品タイトル。
■内容:膨大な書物を暗記、遠くの出来事を知る、未来を見通す等、不思議な能力を有する「常野」一族を描いた連作集。他に同じ一族が登場する長編「蒲公英草紙」「エンドゲーム」も刊行されています。
『蛇行する川のほとり 第1巻』
恩田陸/著
中央公論社 2002年12月 2004年11月に全3巻を1冊にまとめて刊行 |
■マグリット関連引用部分第1巻の21ページ
「木立の上には強烈な夏の太陽があるのに、私たちは緑の闇の底を歩いている。私は、図書室の画集の中でみたマグリットの絵を思い浮かべていた。」
■ここで主人公が想起されているマグリットの作品とは何でしょう。単純に「光の帝国」のことでしょうか。木立という言葉にこだわると「白紙委任状」「スフィンクスの合唱団」も思い浮かびます。それとも、まさか木立とそれを刺し貫くように太陽が描かれている「宴」でしょうか。
『さよならの空』
朱川湊人/著
角川書店 2005年3月 著者受賞歴:「白い部屋で月の歌を」で第10回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞。『都市伝説セピア』が第130回直木賞候補。『花まんま』で第133回直木賞受賞。 |
■オゾンホールの拡大を食い止めるために開発され、空に散布される化学物質・ウエアジゾン。夕焼の色が消えてしまう以外にとんでもない副作用として「サンフランシスコのひび割れた空」が冒頭に、続いて「空に浮かぶ巨大な塔=サイレント・シティー」なるものが登場します。
■マグリット引用部分は、単行本316ページ。
「では、これは何なのだろう?マグリットの絵が現実化したような、この光景は。」
■ここで言う、マグリットの作品は果たして何でしょうか。「誇大妄想狂U」「夏の階段」「仮面をはがされた宇宙」で表現されているブロック化された空のことでしょうか。
『鏡の偽乙女 −薄紅雪華紋様−』
朱川湊人/著
集英社 2010年8月 |
■眼帯をつけた女性が語る、片目が見せる不思議なイメージは、空中に浮かぶ岩塊がどんどん成長しているという内容でした。
■マグリット引用部分は、単行本89ページ。
「…後年、シュールレアリストのマグリット氏の手による『ピレネーの城』という作品を見た折に、このお欣の言葉を思い出さずにはいられなかった。その東京の空に浮かんでいるという岩のイメージは、あの作品に似ていたのではないだろうか。」
■マグリットの「ピレネーの城」は、浜辺に浮かんでいました。この小説の作品の舞台は大正時代の東京。この頃の東京の上空に浮かぶ岩塊を想像してみてください。